「今夜はビールを飲もう。」
お酒の弱い君が突然そんなことを言うのは、だいたい決まって金曜日の夜。いつになく思い切った口ぶりがおかしくて、なんだかつい笑ってしまう。毎日忙しい職場で文句も言わずに働いているから、たまには「わ〜っ‼」ってなるのでしょう。いつもほんとにお疲れさま。
私も日頃飲まないから、2人で1缶で充分なのはこれまでの研究で立証済みなのに、必ず君は2缶買ってきて、1人1缶をプシュッと開けて、満面の笑顔で乾杯をする。
これだから思わずつられて、金曜日の夜は楽しい。めったに飲まないアルコールのために、枝豆やら煮込みやら唐揚げやら、めったにつくらないおつまみをこしらえて、めったにしゃべらない君がよくしゃべるのを、夜がふけるまで聞いている。
気が付くと君は、電池が切れたようにそのままソファで眠りに落ちている。缶ビールは予想通り、2人合わせて1缶ちょっとの量が残ったまま。だから決まって、ビールの翌日の夕飯は豚肉を煮たやつになる。豚肉はビールで煮るとやらかくなる。そうすると君は「無駄にしなくて偉い。」と褒めてくれるから、ビール2缶もわるくない。
眠った君にブランケットをかけて、付けっ放しのスポーツニュースを消すと、ホロ酔いの私は読書をはじめる。
君との宴のあとの読書。この時間が一番好き。
12月17