Monthly Archives: 3月 2020

強制的新ジャンル開拓法

強制的新ジャンル開拓法

先日、新ジャンル開拓のため、友人と本の交換をしました。一押し……というわけではなく「これは相手が知らないだろう」という作品を選んでのことです。私のところにやってきたのは、怪奇やホラー、サスペンスなど。友人のもとへいったのは、ファンタジーや歴史もの。お互いに読まず嫌いをしていたものですね。「うわ、きてしまった……」と思ったのですが、実はこの企画、事前にルールを決めていたのです。それは「一月後に、本の感想を言いあう」というもの。要は、読まなければいけない状況を、自分達で作り出したのですね。
罰則などはありませんが、約束は守らねばなりません。私は渋々、恐ろしい表紙の漫画を手に取りました。友達は「それでもマイルドな方だよ」と言っていましたが……これは、夜にはとても読めないよ、という内容です。でも明るい中で見る分には、結構面白いと思いました。怖いだけではなく、人間の精神の本質について描かれていたからです。喜怒哀楽が、ようはその根幹なのでしょう。
自分で買うにはハードルが高いですが、案外読めるということに気付けたので、今回のトレードは私にとっては、成功だったと思いました。友人はなんて言ってくるかしら。約束の日が楽しみです。

開かれない百科事典

開かれない百科事典

かつての祖父の書斎には、古い百科事典が並んでいます。今ならばたいていのことはインターネットで調べられますから、これほど分厚く幅をとるものは、家庭には必要ないでしょうね。正直に言えば、私もそれを開いたことはありません。なにせ子供の頃は入室を禁じられていましたし、今となっては、埃の積もった本を手にするだけの勇気がないからです。
しかし祖父にとっては、宝物だったのでしょうね。「何回も引っ越しをしたけれど、あんなかさばるものをずっと持って動いていた」と祖母が言っていました。ちなみに娘である母は子供の頃、わからないことがあると、その事典を使って調べたこともあるそうです。ただ、ひとりで読むことは許されず、必ず大人の目の届く範囲で、ということが使用条件だったのだとか。落書きでもされると思っていたのかしら。それとも子供向けではないから、ひとりで内容を理解するのは無理だと思ったのかもしれません。
今、自身が愛した書斎がただの物置となっていると知ったら、祖父は悲しむだろうなあと思います。ただその物置は、親戚の子にとってはよい遊び場の様子。いつかその子らが、あの百科事典を開くときが来たりして。会ったこともないおじいちゃんの想いが、彼らに通じたら素敵だなと思います。