Monthly Archives: 6月 2019

本命は読むことと食べること

本命は読むことと食べること

どこに行くにも文庫本を手放さない友人がいます。しかしその子は本が宝物と言いつつも、後生大事にしてはいません。ページはあちこち折れているし、表紙のカバーがないものもあります。でもこれは「ボロボロになるくらい持ち歩いた証拠」なのですって。確かに、鞄の中に入れておくと、気付かない間に曲がってしまったりすることがありますからね。
それならブックカバーをつければいいのに、なんてまっとうなアドバイスは、彼女には無駄ですよ。私が以前その文言を言ったとき、彼女は「だって面倒なんだもの」と笑いました。どんどん読んでしまうから付け替えるのも大変だし、読み途中があったとしても、違う作品に惹かれることもある。だから余計なものをつける手間は省きたいのだそうです。
これは料理好きの別の友達と同じ意見だ、と思いましたね。この子は美味しいものが大好きで味覚も優秀、料理もとても上手いのですが、なにせ早く食べたいものだから、盛りつけがかなり大雑把なのです。「食べることに最大の労力を使いたい」と言っていたあたり、読書好きな彼女とそっくりでしょう。どちらもちょっと個性的だけど、それほど大事なものがあるのは、素晴らしいことだと思います。

本の仲介をする喫茶店

本の仲介をする喫茶店

この間初めて訪れた喫茶店に、壁一面の書棚がありました。中には乱雑に、文庫や漫画、写真集などが並んでいます。お店の方の趣味だと思った私は、ずいぶん興味の幅が広いなあと感心したのですが、一時間ほど店内にいるうちに、あれはお客さんが置いていくのだと気付きました。聞けば、もう読み飽きたものを自由に書棚に並べているのだそうです。
最近は読み終えた本を、古本屋に売る人も多いでしょう。そうすればたとえ額は少なくともお金になりますから、ぜひそうしたいという考えもわかります。ただこうして自分の本が循環していく流れを直接見られるのも、素晴らしいですよね。私は知らずに出掛けたので、あいにく置いていける物は持っていなかったのですが、次回はちゃんと、ここを目的地と定めてきたいと思いました。
ちなみに、置いた数と同じだけは持って帰ってもいいのですって。書籍の物々交換ですね。次行くときに、素敵なものがあるかしら。あれだけの中から選び放題だと思うと、今からウキウキしてしまいます。もちろん、店内にいる限りは、どれだけ読んでもいいのですよ。たっぷり読んで、そこから持ち帰るためのお気に入りを選ぶのが得策かなあという気がしています。