どこに行くにも文庫本を手放さない友人がいます。しかしその子は本が宝物と言いつつも、後生大事にしてはいません。ページはあちこち折れているし、表紙のカバーがないものもあります。でもこれは「ボロボロになるくらい持ち歩いた証拠」なのですって。確かに、鞄の中に入れておくと、気付かない間に曲がってしまったりすることがありますからね。
それならブックカバーをつければいいのに、なんてまっとうなアドバイスは、彼女には無駄ですよ。私が以前その文言を言ったとき、彼女は「だって面倒なんだもの」と笑いました。どんどん読んでしまうから付け替えるのも大変だし、読み途中があったとしても、違う作品に惹かれることもある。だから余計なものをつける手間は省きたいのだそうです。
これは料理好きの別の友達と同じ意見だ、と思いましたね。この子は美味しいものが大好きで味覚も優秀、料理もとても上手いのですが、なにせ早く食べたいものだから、盛りつけがかなり大雑把なのです。「食べることに最大の労力を使いたい」と言っていたあたり、読書好きな彼女とそっくりでしょう。どちらもちょっと個性的だけど、それほど大事なものがあるのは、素晴らしいことだと思います。
6月28