よく晴れた週末は、電車に乗ってどこまでも行きたくなる。知らない街じゃなくてもいい。通勤の定期券が使える区間でも、出勤の混み合う車内から見られない景色が車窓に広がる。
遠く北の方に見える観覧車のような建物。西の山の稜線に目を凝らせば、地上からひときわ頭を高く飛び出す富士山。線路の北側の緑道は、いつの間にかこんなに緑を茂らせている。季節は私が思っているよりもずっと早く移ろっている。
いつもの電車の車窓から見える新しくて新鮮な景色に心を踊らせながら、忙しい毎日の中で置き忘れた大切なものを拾い集めた。
やがて眠くなり、読もうと思っていた新書は、バッグの中で眠らせたまま、私もいつしか眠ってしまった。
目を覚ますと、定期券で行ける一番端の駅…つまり、職場の駅に着いていた。どれだけ心が安らいでいても、体内時計は自宅と会社の距離をしっかり把握しているらしい(笑)。頼もしくもあり、切なくもある。
心地よい目覚めとともに、駅中のカフェで眠っていた新書を起こして、しばし読書をすることに。
こうして職場の駅で、こんなに穏やかな時の流れを感じたことは今までなかった。
街は自分の気持ちでその色を変える。まだまだ知らない景色がある。だから私は、東京が好き。
10月21